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東京ガーデンテラス紀尾井町ではじめよう
パブリックアート鑑賞入門

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東京ガーデンテラス紀尾井町のパブリックアートに、アートコンサルタントとして設計段階から携わり、現在は京都市京セラ美術館で企画推進ディレクターを務める前田尚武さん。パブリックアートの楽しみ方について聞きました。

―そもそもパブリックアートとは何ですか?

「言葉の通り、パブリックスペースに展示されたアートですが、ここでいうパブリックスペースとは幅広い意味でとらえられています。公園や広場、公開空地などの屋外空間から、商業施設、オフィス、ホテル、病院などの屋内空間まで。パブリックアートには、誰でもいつでも鑑賞できるアートばかりではなく、限られた人々が利用する施設内の共用空間に展示されるアートも含まれます。

―どんな働きが期待されているの?

街のシンボルとして観光名所となったり、人々が集い、待ち合わせや位置確認の機能をもつことも。街のコンセプトやビジョンを表した作品は、人々に特別な街としての印象を与えてくれます。また、その波及効果によって都市全体の価値を高めることも考えられますね。風の動きや雲の流れ、光と呼応したり、自然や生命の息吹を感じさせる作品は、緑豊かな庭園や芝生広場を背景に、癒しの時間と空間をもたらすこともできるでしょう。親子や家族が遊べるインタラクティブな作品では、子どもたちの笑顔を生み出してくれるのではないでしょうか。。

―企業や自治体が、敷地や建物の中にアート作品を設置するのはどうして?

企業や自治体はそのビジョンやミッションを、アートを通して発信することで、人々に街や建物を覚えてもらい、アイデンティティを感じてもらうことができます。いま大都市では、経済性と合理性を追求してきた鉄とガラスの四角い箱型の建築が建ち並んでいますが、それぞれの建築デザインの違いを認識するのは少し難しいかもしれませんし、「あのアートがある建物」として覚えている場所も多いのではないでしょうか。そのように街のランドマークとしての機能を生み出すこともできますね。

―パブリックアートを楽しむコツ、おすすめの鑑賞方法を教えてください。

作品は、広場や庭、建築との関係を考えて、風景と調和するように選ばれています。美術館のように作品だけに集中して鑑賞するだけではなく、周辺の環境や歴史、地域性との対比や関係性に想像を膨らませると、より楽しめると思います。

―パブリックアートには触ってもいいの?

屋外に展示されている多くの立体作品は、触られることも想定して制作されています。安全性は十分に考慮されていますが、登ったりすることは危険なのでやめておきましょう。

―写真を撮って、SNSに投稿したいのですが。

公共性の高い広場や公園など、屋外にあるアートの写真撮影は、建物や橋などと同様に、風景写真の一部として撮影するならSNSへの投稿もOKです。東京ガーデンテラス紀尾井町のパブリックアートは、建物や緑とアートを一緒に撮影すると映えるように計画しています。例えば、大巻伸嗣さんの「Echoes Infinity ~Immortal Flowers~」と紀尾井タワー、名和晃平さんの「White Deer」とクラシックハウスが一緒に写るアングルを探すのも面白いですよ。

―東京ガーデンテラス紀尾井町のパブリックアートの見どころを教えてください。

通常、大都市の再開発では、設計が完了する頃からアート計画に取りかかるため、アートの重量や大きさなどに多くの制限が課されます。それでは自由な発想で作品を選定することができませんよね。でも、東京ガーデンテラス紀尾井町では、設計段階から建築家やランドスケープデザイナーとともに、ここにふさわしい作品の大きさやコンセプトを議論し、最適な場所に配置できるように詳細な検討が行われました。
そのコンセプトとは、「時×人×緑~紀尾井町の時と人と緑をつなぐ~」です。例えば、大巻さんは花がもつ儚さや軽やかな風の動きを視覚化するインスタレーションで知られています。紀尾井タワーのエントランスに設置されている、江戸の花文様をモチーフにした大きな花束「Echoes Infinity ~Immortal Flowers~」は、江戸の華やかな文化が受け継がれていることを象徴しています。春はお濠の桜とともに作品を楽しめるように、お濠沿いの小道にも小さな花の作品を展示しています。 名和さんは、泡が雲のように時間とともにそのフォルムが変化する作品や、鹿の剥製を透明な玉で覆った作品など、彫刻の可能性をひらく斬新な作品を発表してきた国際的なアーティストです。戦前、日本の皇族であった李王家の旧邸宅前に鹿の彫刻を展示したのは、古から皇室を守ってきた神獣である鹿がふさわしいと考えたからです。この旧李王邸は、戦後進駐軍の接収返還を経て、赤坂プリンスホテルとして再生しました。プリンスと名付けられた皇室由来の建築とアートのコントラストを楽しんでいただきたいです。

―東京ガーデンテラス紀尾井町を訪れる方へ、メッセージをお願いします。

このようにアートは置いてある場所にも意味があり、それを読み解く楽しみも与えてくれます。ほかにも紀尾井町の地形や高低差を生かして、回遊が楽しめるように数々の作品が点在しているので、散歩しながらめぐってみてはいかがでしょう。アートを楽しむコツは、まずは無心で見て感じてから、時に自由に、時に深く読み解くこと。そして、なぜこの作品がここにあるのか、この作品をつくったアーティストはどんな人なのかなど、少しだけ掘り下げてみると新しい発見があるかもしれません。

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前田 尚武(まえだ なおたけ)

京都市京セラ美術館 企画推進ディレクター、京都美術工芸大学特任教授|一級建築士/学芸員。2003年より森美術館に在籍。展示デザイン、展覧会企画、国内外の美術館・博物館計画に携わり、東京ガーデンテラス紀尾井町のパブリックアートのアートコンサルタントを務める。2019年より京都市京セラ美術館。2019年度日本建築学会文化賞、日本空間デザイン賞2021博物館・文化空間部門金賞ほか受賞。

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